鼻中隔矯正術、粘膜下下甲介骨切除術の手術では従来は約1-2週間の入院が必要とされていました。しかし、内視鏡やサージトロンなどの手術支援機器の開発、診断・治療技術の進歩により、限られた症例では日帰り手術が可能となりました。 手術の大体の流れは以下のとおりです。
鼻中隔とは鼻の真ん中のしきりのことです。軟骨の板と、骨の板とでできています。顔の発育とともに鼻も発育しますが、骨より軟骨の板のほうが発育が盛んなので、その違い(ひずみ)のために彎曲(わんきょく)がおこります。誰でも多少鼻は曲がっていますが、いつも鼻がつまって口呼吸やいびき、においがわからな いなどの症状がある場合は手術で直します。
これを鼻中隔矯正術といいます。下の患者さんは、右に凸の鼻中隔彎曲症です(オレンジ太線)。また、特に左側に肥厚性鼻炎を認めます。
鼻腔の側壁から出ているヒダのようなものを下鼻甲介(上記写真の「*」部分)といいます。粘膜が厚かったり、骨がとび出ていたりすると肥厚性鼻炎になります。症状は、とにかく鼻が一日中詰まりっぱなしで、点鼻薬(血管収縮剤)もだんだんと効果がなくなってきます。これを直すのが、粘膜下下甲介骨切除術(と びでている骨を削る)、下鼻甲介粘膜切除術(厚くなった粘膜を削る)です。
睡眠時無呼吸とは、一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこる、または、睡眠1時間あたりの無呼吸数が5回以上おこることをいいます。 そのため昼間の眠気など様々な症状が引き起こされます。睡眠中に無呼吸が繰り返され、体内の酸素不足、睡眠不足がおこります。その結果、日中の眠気、集中 力、活力に欠けるなどの症状が現れます。仕事においてもその眠気のため重大事故を起こしやすくなります。鼻中隔彎曲症や肥厚性鼻炎はこの原因となることがあります。
睡眠時無呼吸の治療としてCPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸法)があります。マスクから空気を送り込み気道を確保する治療法です。
この治療方法の長所は、気道の虚脱を防ぐ圧を加えることで、理論上完全に無呼吸をなくすことが可能となります。重症の睡眠時無呼吸にも有効です。ただし、 鼻疾患をもつ方は使用困難となりますので、鼻CPAP使用のために鼻手術(鼻中隔矯正術、粘膜下下甲介骨切除術)を行うことがあります。(CPAPがうまくつけられない原因も、鼻呼吸障害であることが多いと考えられます。CPAPがうまく使えない方で耳鼻科を受診されていない方は、ぜひ一度耳鼻科を受診さ れることをお勧めします。)
※ 曲がっている部分の軟骨、骨だけをとりますので、鼻の高さが変わることはありません。
1. 局所麻酔、ガーゼ麻酔と注射でおこないます(麻酔液が苦いです。胸がどきどきしますがすぐおさまります)。
2. 鼻中隔粘膜を観察、メスまたはサージトロンで曲がっているほうの鼻中隔粘膜を切開(図1)。
3. 剥離子で粘膜と軟骨(青い部分)を剥離(図2)。
4. メスで鼻中隔軟骨を切開。
5. 反対側の鼻中隔粘膜と軟骨を剥離。
6. 鼻中隔軟骨や骨の曲がっている部分を切除(ばりばりと音がしてご心配されるかもしれませんが、大丈夫です。)
7. 必要に応じて、下の部分の鼻中隔骨を落とす(コンコン音がして不快かもしれませんが、大丈夫です)。
8. 止血後、鼻中隔粘膜を縫合(図3 鼻中隔はまっすぐになっています。鼻の中の傷は全くわからなくなります。)。 これで鼻中隔彎曲症の手術は終了です。続いて粘膜下、下甲介骨切除術に入ります。
※ 曲がっている部分の軟骨、骨だけをとりますので、鼻の高さが変わることはありません。
1. 鼻鏡で下甲介粘膜を観察、メスまたはサージトロンで下甲介粘膜前端部を切開。
2. 剥離子、またはサージトロンで粘膜と下甲介骨(うす緑の部分です。)を剥離。余分な下甲介骨を切除する。
3. 同時に下鼻甲介粘膜切除術をおこなうこともあります。粘膜を縫います。傷は全く分からなくなります。
4. 止血後、下甲介粘膜前端部を縫合。両方にガーゼをいれて終了です。
手術後、1-2週間は汚れがたまりやすいため、頻回の清掃治療が必要です。
皆様に安心して御自宅で御静養いただくため、また、手術後トラブルを未然に防ぐため、手術後は24時間体制で対応させていただきます。